子どもを支える人間が豊かでないと、子どもも豊かに育たない
リクルート 社会福祉法人 福利厚生 給与水準 インナーブランディング 保育園
あっという間に3月に入り、最近はだいぶ春らしい兆しが出てきましたね。
先日、関東の中心エリアにおいて保育園だけで16施設を運営している運営規模が大きい社会福祉法人の本部に訪問させてもらいました。昭和27年から保育園事業をスタートしているそうなので、かれこれ70年間の歴史があります。
現状で、全体の保育士(正規職員)で約400名、非正規のパート職員を含めると全体で580名のスタッフを雇用しているとのこと。そのサイズ感になると昨今いろいろな園から相談のあるリクルート対策でだいぶ苦労されているのかな?と思って聞いてみると、そんなにリクルートは困っていないとのこと。
全体の1割でも年間で60名程度の入れ替わりが想定されるわけで、そこまでにならなくとも30名程度は毎年採用しなければいけない状況の中で、採用活動がうまくいっている理由は?とお聞きしたところ・・・
『現場の雰囲気が一番』との回答をいただきました。
見学をしにきてくれた学生さんなどが、現場の雰囲気を見てよい雰囲気だと直感できるレベルになっているのでそこが他園に比べて優っている部分ではないか。その雰囲気が大切だという認識は法人全体の歴史の中でそれぞれのメンバーが自然と理解して行動してくれていると思う。と・・・・給与は参考にするけれど、それを決めてにしてしまうような学生はあまり採用しても・・・というお話もありました。
理事長先生の息子さんからそんなお話しを聞かせてもらいました。
そして、その方が以前理事長から言われて、共感した言葉、そして今でも大切にしている言葉があると・・・それが今日のブログタイトルにさせてもらった
『子どもを支える人間が豊かでないと、子どもも豊かに育たない』
シンプルで当たり前に聞こえるかもしれませんが、とても奥の深いメッセージだなと思いましたね。
そんな想いを実現するためにも、この法人で働く先生たちには豊かな環境を用意してあげて、豊かな気持ちで働いてほしいということを考えていろいろと考えながら実践されてきたそうです。
そんな職場環境づくりの中で、もちろん福利厚生制度などにも力を入れているわけで、どんなおもしろい制度が整備されているのかを聞いてみると・・・
・ディズニーランドチケット割引制度
・ローソンチケット優先購入制度(各種イベントやコンサート)
・提携先のグランピング施設割引制度 など
上記の制度は主に、職場のメンバー同士で活用してもらえたらという想いもあって、その背景には職場の人間関係も豊かなものにしてほしいという想いが込められた制度でもあるそうです。
その他、基本ベースとして整備されている福利厚生制度は・・・
リフレッシュ休暇制度、宿舎借り上げ制度、産前産後休暇、住宅手当、通勤手当、介護休業制度、帰省費サポート制度、シフト固定勤務制度、退職金制度、有給休暇制度(一般よりも5日程度多い)、3大疾病保証保険制度、健康管理委員会の設置(健康診断、産業医によるストレスチェック、ヨガ教室の開催)などなど
そんな制度に加えて、給与水準も業界最高峰を目指していて現状の人件費率は78%。給与面でも高いレベルを保証しています。先日一緒に訪問した一部上場企業の役員クラスの方もその水準に驚いていましたからね。私もあらゆる園の給与水準は把握しておりますが、業界最高峰レベルだと言えます。
処遇改善手当の制度がプラスαされたときに、その方が全体の給与ベースを調整し直すよい機会かなと思ったそうなんですが、理事長から、国は国、うちほ法人はうちの法人で分けて考えなさい!!と言われたそうで、その考え方にははっとさせられたそうです。だから、高いレベルが更に高いレベルにアップしたということ。
それに加えて、研修&研究制度&交流活動も充実していて・・・
経験年数やキャリアステージに応じて必要なことを学べる研修プログラムや職員同士が触れ合い学び合う場が用意されています。
①年数別研修(4ステージでの必要な研修)
②法人全体研修(合同研修で全体のチームワークを高める機会を毎年1回)
③参加者希望型研修(中堅海外研修・・・5年勤続の職員対象など)
④研究活動(保育研究部会、栄養士会、看護師会・・・年4回の開催)
⑤同好会活動(職員の心の交流の場づくり・・・ダンス同好会、コーラス同好会、吹奏楽同好会など)
そして、旧態依然とした昔ながらのカルチャーについての話になったのですが、例えば、理事長先生や園長先生や目上の先生がいたら、若い先生が荷物を持ったり、お茶やコーヒーを入れたり・・・そんな時間があるなら、自分のやるべきこと、目の前の子どものことに集中して取り組んでほしい。それが時間の豊かさにもつながるということで、全施設に全自動のコーヒーサーバーを設置されたというお話。
『無駄なカルチャーと無駄な時間の排除』
それも、豊かな職場環境づくりにつながるという考え方と具体的な実践。
ここまでお読みいただいて何か感じた方も多いと思いますが、職場で働く先生たち、スタッフの方々が豊かであるべきという想いに対して、それを実現するための環境づくりを歴史の中で積み上げてきたからこそ、そこで働く先生たちはこの職場に対するロイヤリティーや豊かさの実感を得られている。
それが、この法人全体の魅力であり強みであり、その積み重ねがあるからこそ、学生達が現場の雰囲気を見てよい雰囲気だと直感できるレベルになっている。だから、その他の園がかなり困っているリクルートに関しても、困ることなく人が集まってくる。ということなんだと思いましたね。
もちろん、多くの園が、現場で働いてくれている先生たちに豊かな人生を送ってもらいたいと願っていると思うのですが、それが実現できるような環境づくりを本当に上記の園のように積み重ねて進化させている園と、思ってはいるけれど、その環境整備が具体的にできていない園がある。その差はかなり大きい。
そんなことを業界に特化したコンサルティング活動をしている中で、強く感じます。そんな事実から言えることは、園児募集もリクルートも一緒で、小手先のテクニックでどうにかしようとしても無理だということ。
答えは・・・
『インナーブランディングの強化に勝機あり!!』
ということですよね。つまり・・・
「組織のレベルがあらゆる面で高く、そこで働いている人達が自分の仕事や職場に誇りを持って時間を過ごし、チームワークと人間関係が良好な職場の中で自分自身の豊かさを感じながらやるべきことに邁進できているとき、あらゆることが好循環していく。」
学生にとって、不安因子となる要素を整理する。そして排除する。
例えば、よく学生から出てくるフレーズである『人間関係』『時間』そんな不安因子が払拭されてポジティブ&ワクワクに感じられるような体制を構築して、それを実態としてリアルに伝えられる現場モデルを構築することがキーポイントなんだと思います。
そんな現場モデル構築は、やろうと思ってすぐにできるわけではなく、想いを継続してカタチにし続けていく中でその園のカルチャーとして段階的に歴史とともに蓄積されていくもの。
そんなことをあらためて、今回ご訪問した社会福祉法人で感じとり、コンサルタントとして再確認できる機会となりました。やはり成功しているところには必ず理由がありますからね~
『子どもを支える人間が豊かでないと、子どもも豊かに育たない』
この言葉を本当に高いレベルで実践して、そこで働く先生たちが本当に豊かさを体験、実感できている園を目指す。その方向性はどんな時代においても、大切な道標にしてほしいなと思います。
お読みいただいた方の何かのヒントと未来のハッピーに少しでもつながれば幸いです。